Taichi Nishishita
Architect & Associates
日々のこと

要望を叶えるよりも大切なこと

2023.09.15

計画初期はどうしても間取りにばかり意識が向きがち。間取りがいくら良くても、予算のなかでそれを叶えるために仕様がおろそかになるようでは、本当に求めていることを叶えられない。

例えば、凸凹の多い複雑な平面や広い土地の平屋などは同じ面積・同じ仕様でも、建築費がかなり上がる。

最初だけクライアントに良い顔をするために間取りばかり優先したってぼくは意味が無いと思うし、間取りではなく「空間」が大事。

クライアントが計画初期に間取りばかりに意識が向くのはプロでない以上、当然で仕方ないと思うけれど、プロであるぼくはそうはいかない。

建築家は最後のゴールまで見通して総合的に良い計画にしなければならない。きちんと現実を見据えて、正しく提案していきたい。夢をみるというのは、そういうことだと思う。

これは何かを諦めているのではなく、先を見通しているだけ。

間取りにだけ家づくりの夢を描かず、部分最適じゃなくて、全体最適を目指すことに、ぼくは夢を感じています。

さらに言うなら、ぼくが自邸を建てるにあたっても、自分自身の個別な要望は特に気にしなかった。

自分で言うのも変だけれど、こういう職業をずっと続けているので、いろんな良いものを知っているし、欲望を野放しにすると何もかも膨らみがちだと思う。でも僕は

①土地に似合うこと
②HPに掲げている大らかな設計コンセプトを叶えること

の2点にのみ注力した。

例えば、キッチンは壁付けが良いとか、アイランドが良いとか、そういう希望はあくまで部分的な話であって、「全体の魅力をどう捉えるか」という大きな話の前では、自分にとってはあまりに無力と思えます。

自分の欲望を思い通りに叶えるよりも、もっと大きくて本質的な魅力に向き合い、それらに身を委ねる方がきっと素敵な建築になると信じているから。。。

これまでたくさんの設計を重ねてきたけど、どの設計図よりも時間が掛かっているのが、HPに載せているこの7つのコンセプトの「文章」です。このブログを書きながら、また何度も何度も読み返し、自分の心の灯台として認識を深めていきます。

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