樋口の家
House in Hinokuchi
2025






















敷地は山のふもと、田畑の広がるのどかな地域にある。前面には山から続く水路が流れ、桜の木が彩りを添える。南には水路と桜の近景、北には山並みと開けた空の遠景。それぞれに美しさを持つこの地に、家族4人のゆとりある住まいを計画した。
クライアントは新たな住まいで、庭いじりや手料理など、丁寧に暮らしを楽しむことを希望していた。暮らしが室内で完結せず、外(庭)を取り込んだものとなるよう、室内・デッキ・庭が緩やかに繋がる空間を考えた。また、謙虚で穏やかな雰囲気を持つご家族に相応しい、控えめで落ち着いた佇まいの建築を目指した。
リビングは畳リビングと造作ソファを組み合わせた空間とした。子供がのびのびと遊び、大人がごろんと寝転がって休憩できる。床座の暮らしで視線は自然と低くなり、庭との距離が近づく。
第2のリビングとして、深い軒に覆われたデッキを設けた。子供たちの遊び場であり、皆で集う場となる。LDKの天井と軒裏は同じ素材で連続し、居場所が散りばめられながらも、大きな窓を通して繋がり合う。
外観は低くシンプルな寄棟屋根とグレー色板貼りで、周辺環境に溶け込む、謙虚ながらもおおらかで明快な形とした。
引き渡し後もSNSを通じて家族の暮らしを垣間見るが、日々の暮らしに丁寧に向き合い、愉しんでおられる様子を拝見し、いつも心が温まる。この住まいで、いつまでも自然体の暮らしを営まれることを願っている。
photo:笹倉洋平