Taichi Nishishita
Architect & Associates
  • 御陵の家

    House in Misasagi
    2024

  • 京都市中心部に近接しながら、
    山々に囲まれた盆地として
    独立した環境を保つ山科区御陵。

    ご自身の仕事場、ご両親の仕事場、
    プライベートな居住スペースなど
    複数の用途を同居させる計画。
    グラデーショナルな関係性を持つ
    これらの用途をどのような動線で解決し、
    敷地上の配置と用途ごとにふさわしい
    居心地を与えられるかが、
    この計画を進めるうえで最重要の課題となった。

    写真として映える広いLDKの空間より、
    廊下やトイレ前の手洗いスペースを兼ねる動線、
    階段などが、実はこの建築の空間体験としての魅力の
    本質になっているように感じる。

    用途と用途を行き来するその短いシーンの中に、
    静けさと心の切り替えがある。
    そこには儚い光と暖かい翳がある。

    その場所ごとの最適だけが、
    余白なく繋がる空間は、
    いくら正しく効率的であろうとも苦しい。
    人の気持ちは一様ではないし、
    機械のように正しく動作もしない。

    「繋がり」の意味を考える時、
    それは直接的に繋がって「いない」ことが、
    繋がりをつくり出すこともある。

    設計時にぼんやりと抱いていた感覚が、
    実際の空間と住まい手の暮らしを見るにつれ、
    自分のなかにも腑に落ちていった。